広告の最上段に、大きく「20×10」という数字が置かれています。
意味がすぐには分からないほど大きく配置された数字ですが、ここには開発の過程が象徴的に表現されています。この数字は、20種類のばねと10種類以上の材質を組み合わせながら、3年間にわたって試験を繰り返したことを示しています。耐久性と乗り心地の両立を目指し、サスペンションの検証を重ねたという意味です。
1960年前後、日本では自家用車の普及がようやく始まりました。同時期には日産ブルーバード(310型)が市場で存在感を強め、小型乗用車の競争が本格化していきます。このコロナの広告は、その中で「試験によって裏付けられた信頼性」を強く打ち出したものです。
当時、トヨタの乗用車は「トヨペット」というブランド名で販売されていました。
この広告に登場するコロナも、正式にはトヨペット・コロナという名称でした。
ホームカーを目指した設計
登場するのは、2代目コロナにあたるPT20型です。
ボディは先代よりも低く、横に伸びたスタイルとなり、当時の欧州車の影響を感じさせる外観になりました。
エンジンは997ccのP型で、最高出力は45馬力です。排気量は1リットル未満ですが、家族で使う乗用車として十分な性能を備えていました。特徴的なのはサスペンションの構造です。フロントにはトーションバー式サスペンションを採用し、リアにはカンチレバー式を組み合わせています。低重心と安定した乗り心地を目指した設計でした。
文中には「値下げ」という言葉も見えます。量産体制が整い、価格を引き下げることで自家用車をより多くの家庭へ広げようとしたものです。ここには、自動車を家庭の移動手段として普及させる「ホームカー」の思想がはっきりと表れています。
その後、日本の大衆車市場はカローラの登場によって大きく拡大します。その前段階として、コロナは家庭用乗用車という概念を広げる役割を担いました。
日本のモータリゼーションが本格的に始まろうとしていた時代に、メーカーがどのように信頼と技術を伝えようとしていたのかが伝わってきます。

