1987年 シグマ・レンズ|報道写真家の奇跡

1987年 シグマレンズ 広告。ミラー600mmとAF400mm、ニューヨークの摩天楼。 感性の記憶

ニューヨークの空。摩天楼を背景に、無骨なグリーンを纏った望遠レンズが掲げられている。

1987年、カメラがAF(オートフォーカス)という新しい眼を手に入れ、写真を撮るという行為が、一部の専門家から広く一般へと開かれはじめた時代です。
そのなかでシグマが選んだのは、スペック表ではなく、「報道写真家の奇跡」という言葉でした。道具の話をするより先に、その道具を手にした人間の話をする。広告として、これは正しい選択です。レンズの性能がどれほど優れていても、それだけでは人の心は動きません。そのレンズを持った人間が、何を見て、何を切り取れるのか。シグマはそこを語ろうとしました。

ミラー600mmは全長わずか122mm。AF400mm F5.6はインナーフォーカス式を採用し、望遠レンズの常識を塗り替えました。プロの現場に耐えうる光学性能を、持ち運べるサイズに収める。この矛盾を解くことが、1980年代のレンズ開発の最前線でした。

グリーンに塗られたボディが印象的です。当時の日本製レンズは黒が主流でした。あえて異なる色を選んだことには、単なるデザイン以上の意図が感じられます。「違う道を行く」という、メーカーとしての静かな宣言のように見えます。

いま振り返ると、シグマはこの時代に独自の立場を選びました。現場で使われる道具であるために、性能と価格と携帯性を同時に追いかけた姿勢が、この一枚の広告にも滲んでいるようです。