抜けるような青空とヤシの木。
プールサイドで寛ぐモデルの傍らに、乳白色のボトルが置かれています。
「気分快晴、香りのシャワー。」
1979年に登場した資生堂「タクティクス」の広告です。新発売として紹介されているのは、アフターシャワーコロン。価格は2,000円です。
当時の男性用香水は、重厚で強い印象の香りが主流でした。
タクティクスはそれとは異なり、軽やかなグリーンフローラルを打ち出します。清潔感を前面に出した設計でした。
ブランド名の「タクティクス」は“戦略”を意味します。
ニューヨーク、ミラノ、東京という都市名が紙面に並び、国際的な感性を意識したブランドであることが示されています。日本市場だけで完結しない視点が込められていました。
格子模様の意匠が施された乳白色のボトルは、装飾過多ではありません。洗面台に置かれたときの佇まいまで設計されています。香りだけでなく、生活空間の一部として機能するデザインでした。
1970年代後半、日本では男性の身だしなみに対する意識が変わり始めます。整髪料やアフターシェーブは実用品でしたが、香りは自己表現の要素を帯びていきます。広告のリゾート的な情景は、その延長線上にあります。
現在、メンズコスメ市場は大きく広がっていますが、「清潔感に投資する」という発想はこの時期に定着しました。タクティクスはその流れの初期に位置するブランドです。今も継続して販売されている点が、その支持の継続を物語っています。
「男の香りはスリリングなほうがいい。」
挑発的というより、新しい男性像の提示に近い表現です。香りを纏うことが特別ではなくなり始めた、その入口がこの広告にあります。

