1970年 三洋電機 カセット|世界最小クラスの情報タンク

1970年のサンヨー カセットミニ MR-5080広告。スーツ姿の男性の手のひらに小型カセット録音機が載り、「世界最小のカセット」「ビジネスマンの情報タンクです」と大きく記されている。 技術の足跡

男性の手のひらに収まっているのは、三洋電機のサンヨー カセットミニ MR-5080です。
「世界最小のカセット ビジネスマンの情報タンクです」とあります。巾8.8cm・高さ14cm・奥行3.6cmの超小型で、価格は現金正価27,800円でした。

本文では、「経営ゼミナール、重要伝達、会議、商談……」と用途を並べ、情報を記録して持ち帰るための仕事道具として売っています。

小型化がそのまま価値になる

機能欄には、内蔵マイク、ペンサイズマイク、テープカウンター、バッテリーランプ、直接録音などが並びます。小さいだけでなく、仕事で使える機械として不足がないことを伝えようとしています。

いま見ると当たり前に見える要素も、1970年前後では十分に先進的でした。コンパクトカセット規格がフィリップスによって発表されたのは1963年で、日本では1960年代後半から対応機が広がり始めます。1970年前後は、録音機の主役がオープンリールからカセットへ移りつつあった時期でした。三洋電機もその流れの中で、小型化を武器に前へ出ていたメーカーのひとつです。

「情報タンク」という言い方の新しさ

「情報タンク」という言葉が目を引きます。高度経済成長の終盤、企業活動のスピードが上がるなかで、会議や伝達の内容をその場で記録し、持ち歩き、聞き返すこと自体が価値になり始めていました。録音機を情報処理の道具として売る感覚には、1970年前後らしい時代の空気があります。

現在ではこうした初期の小型カセット機は、音響機器としてだけでなく、携帯情報機器の前史を示す存在として見ることができます。手のひらに収まることをここまで正面から見せた広告には、録ることがまだ少し新しかった時代の熱を感じます。