1983年のリーガルシューズ広告です。「巨人ファンは、エライ。」というコピーが大きく入っています。当時としても少し意外性のある入り方です。
モデルは巨人軍風のユニフォームシャツを着ています。売っているのは野球用品ではなく革靴ですが、広告全体の中心には巨人のイメージが置かれています。
巨人ファンに向けられる悪口として「保守で、サラリーマンで、優等生ブリッ子」といった言葉を挙げています。そのうえで、そうした見方を無理に否定せず、王道を選ぶ姿勢に価値を置いています。
「面白味に欠ける」「覇気がない」といった批判も出てきますが、この広告はそこをひっくり返しません。むしろ、そう言われながらも浮足立たない人間を肯定する構造です。
最後には「巨人ファン以外の方は、カッコ内の言葉を適切な言葉に入れ換えてお読みください」とあります。
つまりこれは、巨人ファンだけに向けた広告ではありません。王道を好み、流行よりも信頼を選ぶ人に向けた広告として作られています。
リーガルと巨人の相性
掲載されている靴は「2112BFコードバン プレーントゥ ¥34,500」
コードバンは当時の高級革素材の代表格でした。1983年の大卒初任給が13万円前後だったことを考えると、3万円を超える革靴は安い買い物ではありません。ただ当時の革靴は、いま以上に「社会人としての身だしなみ」に近い存在でした。流行品というより、スーツや腕時計に近い投資だったと思います。
リーガルというブランドには、定番、信頼、外さない、という印象があります。巨人にも、王道、全国区、サラリーマン的、家庭的といったイメージがありました。どちらも、尖った存在ではありません。けれど、否定しにくい強さがあります。
広告下部には、全国の販売店名と電話番号が細かく並び、情報量はかなり多めです。今の広告なら省かれそうな部分ですが、当時は「全国で買える」こと自体がブランドの安心感につながっていました。
広告が照準を当てていた読者
この広告は、熱狂的な巨人ファンだけを狙ったものではありません。
王道を好み、安定を求め、流行より信頼を選ぶ。そういう大人に向けて、「その感覚は間違っていない」と言っています。
1983年当時、そういう層はかなり厚かったはずです。テレビで巨人戦を見て、革靴で通勤し、日曜日には家族と過ごすという、特別に派手ではないが、きちんとしていることへの自負が、この広告にはあります。
「王道を選ぶことに後ろめたさがなかった時代」の感覚が目に残ります。
リーガルの革靴が、その価値観の足元に置かれていたことも含めて、かなり時代が出ている広告です。
