1958年(昭和33年)のこの広告は、「あなたの腕に日付を刻む自動捲精密時計」というコピーから始まります。商品名はオメガ「シーマスター カレンダー」。大きく拡大された時計の文字盤には、3時位置の日付窓がはっきりと見えます。
いまでは日付表示つきの腕時計は珍しくありませんが、1950年代の機械式時計では依然として付加価値の高い機能でした。広告本文には「毎日夜中の午前零時に正確に新しい日付が文字盤の窓に滑り出て来ます」とあり、日付が切り替わる機構そのものが精密技術として語られています。
高級実用品としてのシーマスター
この時計の特徴としてもう一つ強調されているのが自動巻機構です。腕の動きによってゼンマイを巻き上げる完全自動捲の仕組みは、毎日使う時計としての便利さを示す要素でした。
ケースについてもかなり踏み込んだ説明があります。広告には
「英国空軍のためオメガが創った時計から発達した三重密閉のケース」
と記されており、軍用時計の技術的系譜が示されています。1940年代、オメガはRAF(英国王立空軍)向けに時計を供給しており、その堅牢な構造が民間モデルにも応用されたという文脈です。
性能として挙げられているのは、防水・防塵の三重密閉ケース、対衝撃、対磁気、温度不感といった要素です。さらに「200呎の水底でも水圧と浸水を防ぎます」とあり、防水性能は約61メートル相当になります。1950年代の腕時計としては十分に高い耐久性でした。
素材はステンレススチールまたは18K金側。広告の価格は、¥56,400よりとあります。1958年当時、日本の大卒初任給はおよそ13,000円前後だったので、給料の4か月分以上に相当します。輸入高級時計がどれほど特別な存在だったかが、この数字からよく分かります。
「いつか持つ時計」
最後にはこう書かれています。
「世界中の人々が信頼している時計……オメガ
それをいつかあなたもお持ちになるでしょう」
この「いつか」という言葉が、憧れとして意識されるブランドとしての位置づけをよく表しています。購買を急がせるのではなく、長い時間をかけてブランドへの信頼を育てる意図です。
シーマスターの系譜はその後も続き、現在もオメガの代表的シリーズの一つとして残っています。1950年代のシーマスター カレンダーも、状態の良い個体は国内外の時計市場で取引されており、当時の広告が語っていた「いつか」という言葉とは別のかたちで、いま再び手に取られています。

