セピアがかったモノクロームの画面に、静かなゴルフ場の情景が浮かんでいます。コースの傍らに停められた一台のセダン。木漏れ日を反射するボディの質感は、当時の印刷が醸し出す独特の陰影の中に溶け込んでいました。白球を追う友人たちを待ちながら、愛車の輝きを静かに眺める。そんな、当時のエグゼクティブたちの穏やかな余暇を切り取った一枚です。
「ハイウエイ時代の高級車」
1960年。日産と合併する前のプリンス自動車工業が世に問うたニュースカイラインは、来るべき高速道路時代を見据えた意欲作でした。もっとも、この車はもともと“日産のスカイライン”ではありません。航空機技術の流れを汲む技術者たちが築いた、プリンスという独立メーカーの矜持。その志の延長線上に、この一台はありました。
当時、日本の高速道路網はまだ整備の途上にありました。それでも広告は、現実の道路より一歩先を描きます。特徴的なのは、国産車としては珍しい四灯式ヘッドランプ。そして高速域でも安定した制動力を発揮する、新型の強力複動ブレーキの採用。来るべき“高速の時代”を、技術で先取りしようとする意志が感じられます。
「M君のクラブが光っていた」という叙情的なコピーは、スペック以上に、この車を持つことによる精神的な豊かさを強調していました。秋風が頬を拭ってくれるような、静かで上質な時間がここには流れています。モノクロの芝に落ちる長い影。その奥に、日本の自動車が次の段階へ踏み出そうとする気配が、かすかに漂っていました。
1970年代の国産スポーツカー
- マツダ・サバンナRX-7(1978) ― ロータリーが描いた新しい走り
- トヨタ・セリカ(1971) ― 若者文化を象徴した一台
やがて“スカイライン神話”と呼ばれる物語も、このあたりから始まっていたのでしょう。

