黒い夜空に大きな花火が開き、その手前に真っ赤な「金鳥の夏」が置かれています。誌面の構成はかなり大胆ですが、言いたいことは明快です。商品を一つずつ説明する広告ではなく、金鳥という名前そのものを夏の定番として押し出す広告です。白い帯の上に並ぶのは、金鳥マット、コックローチS、キンチョール、金鳥かとりせんこうの4製品です。
大日本除虫菊の創業は明治18年(1885年)です。もともとは蚊取り線香の原料となる除虫菊に根ざした会社で、戦後は家庭用殺虫剤全般へと製品群を広げていきました。1970年代後半には電気式蚊取りマットの金鳥マットも登場し、煙の出る従来の渦巻型だけでなく、煙の少ない、あるいは煙を嫌う家庭向けの選択肢も広がっていきます。1981年の時点でこの広告が4製品を横断しているのは、まさにその変化を反映しています。蚊取り線香の会社ではなく、夏の虫対策全般を任せるブランドとして売り出しています。
「説明」より「宣言」
花火が使われているのも、もちろん計算の上です。花火は、ひと目で夏を伝えられる強い記号です。背景として季節感を一気に作り、その前に4製品をそのまま並べています。製品写真には凝った演出をほとんど加えず、白い帯の上に実物として置いているだけです。それでも成立するのは、金鳥というブランド名がすでに読者の側に共有されていたからです。夏が来たら金鳥、という関係を前提にして成り立っています。
右端に置かれた金鳥かとりせんこうの缶も見逃せません。現在も渦巻型の蚊取り線香は金鳥の主力製品として販売が続いていますが、缶の意匠は時代ごとに少しずつ変わっています。この広告に写る缶は、昭和期のパッケージを知るうえでの資料としても面白く、旧缶デザインとして参照されることがあります。写り込んでいるパッケージにも資料価値があります。
金鳥はこの時点で、渦巻、マット、エアゾール、ゴキブリ用まで揃え、夏の家庭内の虫対策をほぼ一通り押さえていました。花火を背負っているのに、中身はかなり実務的で強い。気分だけでなく、家庭の現実に根を張っていたことがよくわかります。

