色とりどりのパッケージが重なり合い、洗剤や石けんなどの製品が並んでいます。中央には大きく「ザブ」と書かれた箱が置かれています。
「花王の製品が農協におめみえしました!」
1964年、花王石鹸(現・花王)の家庭用品が農協(JA)で取り扱われるようになったことを伝える広告です。都市で広がりつつあった生活用品が、農村部にも浸透していく時代の空気が感じられます。
農村へ広がる近代的な生活
1960年代、日本では生活様式の近代化が急速に進んでいました。
都市部だけでなく、農村でも生活用品の選択肢が広がっていきます。
農業協同組合は農業資材の供給だけでなく、日用品の販売拠点としても機能していました。地方では大型小売店がまだ少なく、農協は生活物資の重要な流通窓口でした。メーカーにとっても、農協のネットワークは全国へ販路を広げる有力なルートでした。都市の生活文化を象徴するメーカー製品が農村へ届くことで、日本全体の生活水準が徐々に均一化していきます。
合成洗剤の普及
広告の中心に置かれているのは洗濯用洗剤 「ザブ」 です。石けんに代わる合成洗剤として、強い洗浄力を特徴としていました。また 「ニュービーズ」 は、洗浄力に加えて爽やかな香りを残す新しい配合を売りにしていました。洗濯に「清潔」だけでなく「香り」という価値を加えた製品でもあります。
この広告には他にも
野菜・食器用中性洗剤 ワンダフルK
住居用洗剤 マイペット
衣類用漂白剤 花王ブリーチ
石けんやシャンプー
など、用途別に分かれた多くの製品が並んでいます。
洗濯、食器洗い、掃除、身だしなみといった日常の家事に、化学製品が深く入り込んでいった時代でした。
100円という身近な価格
特徴的なのは、多くの製品が100円という価格で紹介されている点です。
1964年の大卒初任給はおよそ2万円前後でした。100円の洗剤は家庭で日常的に購入できる価格帯であり、生活用品として広く普及する条件を備えていました。詰め替え用のワンダフルKが50円とされていることからも、家計を担う主婦層の実用性を意識した設計がうかがえます。
生活を支えるメーカーへ
この広告では製品を、からだ・衣・食・住、という分類で紹介しています。
これは花王が単なる石鹸メーカーではなく、生活全体を支える家庭用品メーカーへと拡大していく姿勢を示しています。色鮮やかなパッケージが並ぶこの一枚からは、化学製品が家事の効率化と衛生環境の改善を支え、日本の暮らしを大きく変えていった1960年代の空気がよく伝わってきます。

