グラスを手にした矢沢永吉が、正面を見据えています。
コピーは短く力強い。「男は味へ。」
1983年、日本の洋酒市場は大きく変わりつつありました。ウイスキーは依然として贈答品としての価値を持ちながらも、個人の嗜好品として日常に取り込まれていきます。家庭でハイボールを楽しむ人も増え、輸入スコッチの存在感も徐々に高まっていきました。
その流れの中で展開されたのが、ジョニーウォーカー赤ラベルと矢沢永吉を組み合わせたこのキャンペーンです。
起用されたアイコンと販促の仕掛け
紙面の主役は、グラスを手にした矢沢永吉氏の鋭い眼差しです。
コピーは「男は味へ。」。そのタフな言葉と彼の個性が重なり、スコッチの持つイメージを強く印象づけています。
特筆すべきは、購入特典としてカセットテープが用意されている点です。音楽とウイスキーという二つの嗜好品を組み合わせる手法は、この時代の販促としてよく見られたものです。若者文化と大人の酒を自然に結びつけ、ブランドへの関心を広げる狙いがありました。
カセットテープという特典
この企画では、カセットテープが購入特典として用意されています。
ボトルに付いた抽選カードを送ると、矢沢永吉のカセット「YAZAWA、夢です。」が当たるという仕組みでした。そこにはCMイメージソング「LAST CHRISTMAS EVE」などが収録されています。
音楽と酒という二つの嗜好品を組み合わせる手法は、当時のマーケティングとして非常に効果的でした。若者文化と大人の嗜好の境界にいる世代に向けて、自然にブランドを浸透させる狙いが見えます。
カセットテープというメディアも、1980年代の空気を象徴しています。ウォークマンの登場以降、音楽は個人の生活に密接に入り込む存在になっていました。
赤ラベルというスタンダード
ジョニーウォーカーのラインナップの中で、赤ラベルは最も親しみやすい位置にあるブレンデッドスコッチです。
軽快でバランスの取れた味わいが特徴で、ストレートだけでなくソーダ割りなど多様な飲み方に向いています。家庭で気軽に楽しめるスコッチとして、世界中で広く親しまれてきました。
当時の日本では、輸入洋酒の人気が高まりつつありました。店頭での販売を後押しするために、抽選カードや特典を組み合わせた販売促進が盛んに行われます。このキャンペーンもその流れの中にあります。
現在では、当時配布されたカセットテープやカレンダーはコレクターズアイテムとして扱われることもあります。それだけ1980年代の洋酒文化が活気に満ちていたという証でもあります。
スコッチのブランド、ロックミュージシャン、そして音楽メディアの三つの要素が重なったこの一枚は、1980年代のライフスタイルそのものを映しています。

