値札の形をした大きな紙に、¥756,000の旧価格を太い線で消し、その下に¥698,000と大きく書いています。この広告は、フォルクスワーゲン1200の姿より先に、値下げそのものを見せています。
自動車輸入関税引き下げの影響
この広告の芯は、フォルクスワーゲンそのものの説明より、関税引下げで輸入車が少し近づいたというニュース性にあります。1970年は、自動車輸入関税が段階的に引き下げられていく流れの中にありました。装備や走行性能を細かく語るのではなく、まず価格改定を大見出しにしているところに、当時の輸入車市場の空気がよく出ています。
とはいえ、698,000円は決して気軽な買い物ではありませんでした。値下げ幅は目を引いても、なお輸入車は十分に特別な存在だったはずです。だからこそヤナセは、ただ安くなったと伝えるだけでなく、「走る世界の個性」、「1700万台の信頼」といった言葉で、価格とブランドの両方を同時にアピールしました。
資料請求から始まる輸入車
資料請求券が付いているのが印象的です。いまなら店頭かウェブで見積もりですが、この時代の輸入車は、まず資料を取り寄せるところから始まりました。販売網も限られていたから、広告は単なるイメージ作りではなく、検討の入口そのものでした。
ヤナセとフォルクスワーゲンの関係は長く続きましたが、この広告はその初期の厚みをよく伝えています。ビートルをはじめとする各輸入車にまだ距離があった時代、ヤナセは関税引下げをそのまま売り文句にしました。フォルクスワーゲンが世界の個性であると同時に、ようやく現実の検討対象にもなり始めたことがわかります。
