1972年 オメガ エレクトロニック f300|クォーツ前夜の精度競争

1972年 オメガ エレクトロニック f300 コンステレーション クロノメーター広告|音叉時計・695,000円・電子クロノメーター 感性の記憶

精度を強調したオメガの広告です。本文には、「1日の平均誤差は、わずかに2秒内!」、「電子クロノメーターの93%をオメガが制覇している」とあります。さらに、「電池の交換は1年1度だけでOK」、「たとえ1か月間、ひき出しに入れておいても、電池の働きで正しい時を刻みつづける」と、実用面まで丁寧に説明しています。

精度を売っていたオメガ

このf300は、音叉を振動源に使う電子時計です。モデル名のf300は、その振動数に由来します。いま振り返ると過渡期の技術ですが、オメガはこれを、未来的な実験機ではなく、高級時計の最先端として正面から売っていました。

見せ方にもよく出ています。新技術を語っているのに、紙面は冷たい工業製品の広告ではありません。2本の時計を正面から静かに置き、精度の話をしながら、同時に高級品としての格も崩していません。とくに89,000円と695,000円という価格差は強烈で、同じシリーズの中に実用品と超高級品の両方を並べていたことがわかります。

Ω印に技術の信用を込める

文字盤上の小さな赤いΩマークに、技術の違いを託しています。外見だけでは伝わりにくい精度や方式の差を、ひとつの印で示そうとする、1970年代初頭の高級時計広告らしい発想です。

音叉式時計は、その後クォーツの普及で主流にはなりませんでした。だからこそf300は、時計史のなかで短期間だけ前線に立った技術として記憶されています。この広告も、オメガがその精度を高級品として売っていた時代を伝えています。