まず目に入るのは、商品ではなく少女の顔です。右ページいっぱいに顔が置かれ、目を閉じています。頬の質感まで見える近い撮り方ですが、表情ははっきりしません。悲しんでいるのか、何かをこらえているのか、それともただ静かに目を閉じているだけなのか、その判断は見る側に委ねられています。
赤い縦書きで「きみの、つぎに、あったかい。カップヌードル」とあります。即席麺の広告なのに、味でも具でも価格でもなく、最初に出てくるのは「あったかい」という感覚だけです。
その下の本文はさらに印象的です。
「ユキとボクは幼なじみだ。もう12年もつきあってる。なのに、いちどもキスをさせてくれない。」と始まり、小学、中学、高校と待たされる話が続きます。いま読むと、かなり際どい設定です。小学生の頃からそんな話を前面に出すのか、と感じる人も多いでしょうし、現代なら企画段階で一度は止まりそうです。ただ、そこを含めて当時は、少し背伸びした恋愛感情や気まずさまで広告の題材にできました。
商品より先に気分を売る
1984年は、日清食品がシーフードヌードルを発売した年です。カップヌードルは、1971年の発売から十数年で、すでに広く知られた商品になっていました。だから、新しい味を細かく説明するより、ブランドの空気を先に見せています。売ろうとしているのは、シーフード味の特徴よりも、カップヌードルが持つ「あたたかさ」が前に出ています。
いま見るとこの広告はかなり癖があります。新発売広告なのに、商品説明はかなり後ろですし、幼なじみとの距離感を描いた本文も、現代なら少し危うく見えます。だからこそ、1980年代の広告がまだこうした題材を軽やかに扱えたことも伝わってきます。
シーフードヌードルはその後、シリーズの定番になりました。発売時の広告を見返すと、最初から王道の売り方だったわけではないことがわかります。少し気取っていて、少し無茶もできた時代の新作です。

