1988年 日本宝くじ協会 宝くじ|一寸先は、イエッ

1988年財団法人日本宝くじ協会雑誌広告。水しぶきを浴びながら大きく口を開けて笑う外国人女性の顔のアップ。「一寸先は、イエッ」の縦組み大コピーと斜めに流れるボディコピー。日本宝くじ協会ロゴ。 社会の肖像

「一寸先は、イエッ」

ずいぶん強い言い方です。ふつうなら「一寸先は闇」と続くはずの言葉を、この広告はあっさりひっくり返します。1988年の宝くじ広告は、その乱暴なくらいの前向きさを押し出しています。

水しぶきを全身に受けながら、外国人女性が口を大きく開けて叫んでいます。喜びとも驚きともつかない表情で、当たった瞬間というより、何かいいことが起きそうな予感そのものを写したような写真です。宝くじの広告なのに、当選金額でも当選本数でもなく、まずこの気分から入ります。

理屈で宝くじを否定する人間を「心がビンボー性」と軽くあしらい、見えない未来を楽しみとして信じる姿勢を肯定する。説得ではなく共感で買わせようとしています。

その軽さは、写真の選び方にもよく出ています。1980年代の雑誌広告では、外国人モデルの笑顔や大きなリアクションが、豊かさや開放感の記号としてよく使われました。この一枚もまさにそうで、水しぶきの中で叫ぶ姿が、理屈抜きの明るさをそのまま引き受けています。硬い「財団法人日本宝くじ協会」という表記との落差も、かえってこの広告の印象を強くしています。

バブル前夜の楽観主義

1988年は昭和63年、翌年には昭和が終わります。
地価も株価も上がり、世の中全体に、どこか根拠のない自信が漂っていた時代でした。「一寸先は闇」という言い回しを、そのまま「イエッ」に変えてしまうこのコピーは、そうした空気をかなりよく表しています。暗い先を警戒するより、明るい偶然の方を信じたい。そんな気分が、この頃にはたしかにありました。

この広告に残っているのは、先が見えないことを、少し楽しいものとして受け取っていた時代の明るさです。無責任といえば無責任ですが、その軽さこそが1988年らしい。「一寸先は、イエッ」は、かなり妙なコピーなのに、あの頃の空気の中ではちゃんと通っていました。