「コンマ1秒に涙し、笑い、畏れる男たちへ。」
1983年、セイコーはスポーツウォッチの新シリーズ「スピードマスター」を発売しました。並ぶのは、アナログとデジタルの2モデルです。白い背景に黒い本体、そこへオレンジや黄色の差し色。どちらも一目で計測機器らしく見える造形で、単なる腕時計というより、走るための道具として置かれています。
2モデルの位置づけ
誌面に並ぶのは、50,000円のSAY048と30,000円のSBA028です。
SAY048は、アナログ表示のクォーツクロノグラフを主役に据えた上位モデルで、サーキットウォッチという呼び方にふさわしい精密さと存在感を持っています。一方のSBA028は、速度表示やラップ計測を前面に出したデジタルモデルで、腕時計というより携帯できる計器に近い発想です。
セイコーは、アナログの格好よさとデジタルの多機能性を並べることで、1983年当時のスポーツウォッチが向かっていた二つの方向をわかりやすく示していました。
「ハンドル握む腕に」という売り方
「ハンドル握む腕に SEIKO SPORTS スピードマスター」というコピーを用い、腕時計をモータースポーツの空気に近づけようとしていました。
今見ると、速度表示やラップ機能を腕時計に求める場面は多くありませんが、時間を見るだけでは足りなかった時代の感覚がよく出ています。時計は、時刻を知る道具である前に、計ることを楽しむ機械でもありました。

