1980年 トヨタ バッテリーフォークリフト FBAシリーズ|「すごい新型」

1980年6月のトヨタ・バッテリーフォークリフトFBAシリーズ広告。白背景の中央に黄緑色のフォークリフトを大きく配置し、長時間稼動や高速走行を訴求している。 技術の足跡

「すごい新型、いま、トヨタから。」

見出しはかなり強気です。とはいえ、誌面の見せ方は派手ではありません。白い背景の中央に、黄緑色のバッテリーフォークリフトを大きく置いただけです。乗用車広告のような演出はなく、余計な情緒もありませんが、そのぶん製品そのものの存在感が前に出ています。1980年当時の現場向け広告です。

まず押し出されているのは、「静かでクリーンなバッテリーフォークリフト」に、機動性と長時間稼動能力を持たせたという点です。つまり、電動式の長所はそのままに、弱点と見られていた部分を埋めた新型だと説明しています。産業機械の広告らしく、雰囲気ではなく実用の改善で勝負しています。

バッテリー車の弱点を数字で返す

広告が強調している性能は三つあります。
ひとつは「1日5時間の連続稼動を実現(当社実測値)」。
もうひとつは「14km/h(無負荷時)の高速走行を実現」。
さらに「460mm/sec.(2トン積無負荷時)」の荷役スピードも掲げています。

面白いのは、どの数字も単なるスペック自慢ではないことです。バッテリー式フォークリフトは、当時すでに静かで排気ガスが出ないという利点がありましたが、その一方で、稼動時間、力強さ、作業速度の面ではエンジン車に見劣りすると受け取られがちでした。この広告は、そこを正面からつぶしにいっています。長く動けること、移動が遅くないこと、荷役もきびきびこなせることを、言葉ではなく数値で示しているわけです。

本文でも、「従来、バッテリー車の弱点とされていた稼動時間、パワーなどの面で大きく性能アップ」と書かれています。電動だから静かで清潔というだけでは導入の決め手になりにくい現場に対して、これはもう主力機として使えると説得しています。

オイルショック翌年という背景

1980年は、第2次オイルショックの直後です。そう考えると、省エネがしっかり訴求されているのは自然です。広告には、バッテリー車専用のタイヤによって消費電力の節約に効果があることや、過放電警告ランプによってバッテリー管理をしやすくすることが書かれています。省エネは単なる美点ではなく、現場の導入理由としてかなり重要だったはずです。

同時に、安全性と作業性にも細かく手が入っています。セーフティワイドマストによる前方視界の改善、低く設計したフロントプロテクター、4脚式ヘッドガードなどが並び、単に速くなっただけではなく、扱いやすく安全にも配慮した新型であることを伝えています。さらに、1.5トン以上ではパワーステアリングを標準装備とし、低床化や大型ステップによって乗り降りもしやすくしたとあります。毎日使う道具としての完成度を高めようとしていたことが見えてきます。

産業機械の広告は、乗用車広告に比べるとどうしても地味です。ただ、そのぶん現場が何を求めていたかが率直に出ます。この一枚にも、静かでクリーンなだけでは足りず、長く動き、速く運べて、安全に扱えることまで同時に求められていたことが、そのまま残っています。1980年前後の工場や倉庫が、省エネと省力化を一緒に進めようとしていたことを考えると、FBAシリーズはちょうどその変わり目に現れた製品だったのでしょう。眺めていると、派手さのない広告なのに、現場の要求がじわりと見えてきます。