1975年(昭和50年)、ニッカウヰスキーは「ブラック-50」を発売しました。価格はジャスト1,000円。ダブルサイズは1,900円という設定です。
この価格帯は当時としては非常に戦略的でした。家庭で楽しめる手頃な価格でありながら、単なる廉価酒という印象にはならない。ニッカはその価値を「黒」という色に集約して提示しました。
黒を基調としたビジュアル
紙面にはホテルの窓が並び、それぞれの部屋で人々が夜の時間を過ごしています。
手にしているのはウイスキーのグラスです。
イラストを手がけたのは佐々木侃司氏です。人物の表情や室内の光が静かな夜の雰囲気を作り出しています。描かれている人々は、ビジネスマンらしい人物もいれば、南国のリゾートを思わせる場面もあります。それぞれの生活の中にウイスキーがあるという構図です。
黒を基調にしたレイアウトの中に、ネオンのような色彩とボトルの質感が際立っています。1970年代のグラフィックデザインらしい大胆な構成でした。
ブラックというブランド
「黒は、ニッカの主張です。」
この一文にはブランドの考え方がよく表れています。
ボトル、キャップ、ラベルをすべて黒で統一したデザインは、当時の酒売り場の中でも強い存在感を放っていました。
ブラック50は手頃な価格でありながら、本格的なブレンデッドウイスキーとして作られていました。家庭での晩酌文化が広がっていた昭和50年代の生活にも合った製品です。価格は1,000円に抑えながらも、品質への自負を「黒」という言葉で示しています。
国産ウイスキーの広がり
1970年代、日本では洋酒の輸入自由化が進み、スコッチウイスキーへの関心も高まっていました。国内メーカーはそれに応える形で国産ウイスキーの品質を高めていきます。
ニッカのブラックシリーズも、その流れの中で多くの人に親しまれました。手頃な価格で本格的な味を楽しめる製品として、家庭の酒棚に並ぶことが多かった銘柄です。
現在、ジャパニーズウイスキーは世界的な評価を受けています。その背景には、こうした時代に国内の愛好家を育ててきたブランドの存在があります。
ブラック50の1,000円という価格の中にも、創業者・竹鶴政孝以来のウイスキーづくりへの姿勢が息づいていました。

