「みんなの意見が キャノン LBP-8 に なりました。」
1984年(昭和59年)、キヤノンが発売した「LBP-8」は、レーザープリンタをオフィスの机上へ持ち込んだ製品でした。それまでレーザープリンタは大型で高価な設備であり、一般の事務机の上に置くような装置ではありませんでした。
LBP-8はそのレーザービームプリンタをコンパクトな筐体に収め、パソコンやワープロと接続できる出力機として登場します。1980年代に進んだオフィスの電子化、いわゆるOA化の流れの中で、この機種は新しい文書環境を象徴する存在でした。
当時のオフィスが求めていたもの
紙面にはユーザーの声を思わせるコピーが並びます。
「場所をとらない小さなプリンタ」
「鮮明なプリントアウト」
「いろいろなOA機器に接続できる」
当時のプリンタはドットインパクト方式やデイジーホイール方式が主流でした。これらは印字時の騒音が大きく、文字品質にも限界がありました。文字は点の集合で表現されるため、ビジネス文書としての見栄えも決して高いものではありません。
LBP-8は、静かで鮮明な印字を実現するレーザープリンタとして、その状況を変える存在でした。机上に置けるサイズでありながら、文書の仕上がりを大きく改善する出力機だったのです。
電子写真カートリッジという発想
LBP-8の核心は、キヤノンが複写機で培ってきた電子写真技術を小型のプリンタに応用した点にあります。
特に重要なのが、感光ドラムとトナーを一体化したカートリッジ方式です。これにより複雑な整備作業を必要とせず、ユーザー自身が交換できる仕組みが実現しました。現在のレーザープリンタでは当たり前となっている構造ですが、その原型はこの時代に確立されています。
印刷速度は毎分8ページ。当時のパーソナル向け出力機としては高速であり、レーザーによる文字の輪郭は非常に滑らかでした。ドットプリンタの文字とは明確に異なる品質を持ち、ビジネス文書の完成度を一段引き上げる役割を果たしました。
OA時代を支えた出力装置
1980年代、日本では日本語ワードプロセッサが急速に普及していました。文書作成が電子化されるにつれ、出力の品質が重要になります。LBP-8はその流れの中で登場し、ワープロやパソコンと組み合わせて使われる出力装置として広がっていきました。
このレーザープリンタエンジンは後にAppleのLaserWriterにも採用され、デスクトップ・パブリッシング(DTP)という新しい出版環境の基盤にもなります。パーソナルコンピュータと高品質印刷を結びつけた技術として、世界的にも大きな影響を与えました。
現在ではレーザープリンタはオフィスの標準設備となっています。その「高速・鮮明・静粛」という三要素を机上レベルで実現したLBP-8の登場は、事務機器の歴史における重要な転換点と言えるでしょう。

