「参上」という大きな文字が、紙面の左上に掲げられています。
1970年代、日本は空前の建設ラッシュの中にありました。山を切り拓き、河川をせき止め、都市を結ぶ高速道路網を整備する。各地で進められた大規模な国土開発の現場には、多くの建設機械が投入されていました。
伝えようとしているのは、そうした機械を動かす基盤技術です。
機械を動かす「油圧」という力
前面には、岩場で作業を行う建設機械の姿が描かれています。しかし本文で強調されているのは、機械そのものの性能ではありません。
その四肢を動かす油圧機器です。
油圧装置は、重い構造物を持ち上げたり、正確な位置に動かしたりするための重要な装置です。建設機械、クレーン、船舶機械など、多くの産業機械の中核を担っています。
複雑な地形で巨大な荷重を扱う建設現場では、強大な力だけでなく、精密な制御も必要になります。川崎重工は総合機械メーカーとしての経験を、この油圧技術に生かしていました。
重工業が支えた高度成長
1970年前後、日本の重工業は世界的にも存在感を高めていました。
船舶、鉄道車両、航空機、産業機械。川崎重工はこうした分野で技術を蓄積し、その応用として油圧機器を開発していきます。広告にも「陸・海・空 世界に伸びる」という言葉が掲げられています。
この時期に進められた道路、港湾、ダムなどのインフラ整備は、日本の物流や産業活動を大きく変えるものでした。建設機械の背後で働く油圧技術は、その基盤を支える存在でした。
国土開発という時代
「国土開発」という言葉が繰り返し使われています。
現在ではあまり聞かれなくなった表現ですが、当時の日本では未来の社会を築く合言葉のような意味を持っていました。企業広告の中にも、産業を通じて社会に貢献するという意識が強く表れています。
この広告は、一台の建設機械の紹介であると同時に、高度成長期の日本がどのような産業によって支えられていたのかを示す記録でもあります。

