1970年、松下電器(現パナソニック)は「テクニクス」ブランドからダイレクトドライブ方式のターンテーブルSP-10を発表しました。本紙面は、その技術的特長を前面に出した一枚です。
見出しは「おや? ターンテーブルとモータの間に減速機構がない!」。従来のベルトドライブやリムドライブ方式では、モーターの回転を減速機構を介して伝達していました。SP-10はその中間機構を排し、モーターで直接ターンテーブルを駆動する方式を採用しています。
ビジュアルでは白衣姿の技術者が本体を持ち上げ、内部構造を示しています。外観よりも構造そのものを見せる構図です。ここで訴求されているのはデザインではなく、回転精度と安定性です。
ダイレクトドライブ方式は、減速機構に起因する回転ムラや機械的ノイズの低減を目的としています。SP-10では超低速で安定回転する専用モーターを開発し、マンガンアルミ磁石を採用した駆動系を構築しました。国際特許を取得したと記載されており、独自技術であることを強調しています。
価格は現金正価82,000円です。1970年当時の大卒初任給が約4万円前後であったことを踏まえると、一般家庭向けというより本格志向のユーザーを想定した製品でした。
紙面下部に見えるSL-1000は、このSP-10を組み込んだシステムモデルです。放送局など業務用途への導入も進み、安定性が評価されていました。SP-10は単体機としてだけでなく、プロフェッショナル用途の基盤として位置づけられます。
この一枚が示しているのは、音質表現よりも構造の合理性です。減速機構をなくすという設計判断が、そのまま性能訴求になっています。感覚的な表現に頼らず、機構そのものを説明する構成です。
アナログ再生は、回転精度が前提条件です。SP-10はその土台部分を再定義しました。後年のダイレクトドライブ機の標準化にもつながる流れの起点の一つと見ることができます。

