1979年 カワサキ Z250FT|ハートを熱くする”250”のニューメカニズム

カワサキ Z250FT 1979年 雑誌広告|青い背景にシルバーの車体、キャストホイールと27psのスペック表記 名車と美学

深いブルーの空間に、ストイックに佇むシルバーの車体。
過度な背景を排し、視線は自然とエンジンへ落ちる。

1979年のこの広告は、新設計の「ブラックエンジン」とキャストホイールの造形美を前面に押し出しています。そこにあるのは、排気量という枠を超えて「走りの本質」を突き詰めようとするカワサキの硬派な姿勢です。

「スポーティブ・ハートの実証」

1979年に登場したZ250FTは、空冷4サイクル2気筒OHCエンジンを搭載し、最高出力27ps/10,000rpmを発揮しました。6段リターン変速機、乾燥重量153kg。前後輪ディスクブレーキとキャストホイールを標準装備する構成は、当時の250ccクラスとしては極めて先進的です。

1970年代後半、中型免許制度が定着し、250ccは“若者の入口”であると同時に、経験者が選ぶ実力クラスへと成熟しつつありました。ホンダCB250T、ヤマハRD250、スズキGSX250などがひしめく中で、Z250FTは上位Zシリーズの血統を色濃く受け継ぎながら、「狙いは“250”のパーフェクション」と明言します。単なる排気量の縮小版ではなく、クォータークラスそのものの完成度を押し上げる一台でした。

標準現金価格は318,000円。1979年の大卒初任給は約110,000円前後。車体価格は月給の約2.9倍に相当します。現在価値に単純換算すれば、およそ60万〜70万円規模。250ccは決して“安価な妥協”ではなく、明確な意思を伴う選択でした。

空冷2気筒の鼓動、シャープなスロットルレスポンス、そしてZの名を冠するというブランドの重み。1980年代のバイクブームを目前に控えたこの時期、Z250FTは量より質へと向かうクォータークラスの転換点に位置しています。

この広告が記録しているのは、排気量ではなく“思想”で語ろうとした時代の250です。
ハートを熱くするのは、数字だけではない。そんなメッセージが、静かな青の中に込められています。