1972年 日産 ローレル|走りの美学 新発売

1972年発売の2代目日産ローレル(C130型)の雑誌広告。草原の中を走るグリーンのハードトップが叙情的に描かれている。 名車と美学

紙面いっぱいに広がるボディライン。低く抑えたルーフと、伸びやかなサイドシルエットが視線を引きます。派手な煽りはありません。静かな余白の中で、車体の造形そのものが語りかけてきます。

「ゆっくり走ろう。ゆっくり生きよう。」

1972年にフルモデルチェンジを果たしたC130型ローレル。この世代は、テールランプをバンパーに内蔵した独特のリヤスタイリングを特徴とし、その造形は後年「ブタケツ」の愛称で語られることになります。

もっとも、広告当時にその愛称が前面に出ることはありません。
紙面が伝えようとしているのは、あくまで“新しい時代の上質”です。

1970年代初頭、日本の乗用車市場は多様化の段階にありました。
従来の大型高級車とは異なる、扱いやすさと品格を両立したモデルへの関心が高まっていた時期です。ローレルはその文脈の中で、セドリックやクラウンとは少し異なる立ち位置を提示しました。

広告に並ぶ言葉は、性能値の羅列よりも、走りの感触や室内の快適さに寄り添っています。直列6気筒エンジンの滑らかさ、しなやかな足まわり、落ち着いたインテリア。それらは数字以上に、「日常の中でどう感じるか」を重視した語り口で示されています。

C130型のリヤデザインは、バンパー内に収められたテールランプによって、後方からの印象を強く残しました。当時の広告ではその造形美が強調され、未来的というよりも、むしろ重心の低い安定感として提示されています。

やがてこの世代は「ブタケツ」という愛称で親しまれるようになりますが、この紙面から読み取れるのは、愛称の誕生ではなく、造形と体験の提示です。

高度成長の続く日本で、車は単なる移動手段を超えつつありました。
仕事の延長でもあり、休日の相棒でもある。ローレルの広告は、その“生活との接点”を静かに描こうとしています。

C130型ローレルは、革新を叫ぶモデルではありません。しかし、造形と上質さを軸に時代の空気を受け止めた世代として、確かな足跡を残しました。

ローレルが示したのは、性能の誇示ではなく「扱いやすさと品格」という上質の再定義でした。その背景にある1960–70年代の設計思想の変化は、昭和の国産車 設計思想アーカイブでまとめています。