掌の中にすっぽりと収まる、漆黒の薄型ラジオ。そして耳に掛けるスタイリッシュなイヤーレシーバー。光り輝くリングを背景に、それを持つ指先が、情報という名の生き物をスマートに手懐けているかのように見えました。
「僕は、E・AIRで朝刊を聴く。」
1982年。ソニーが発売したAM専用ポケットラジオ「E・AIR(イー・エアー)」ICR-E7は、厚さ17.5mm、重さ97gというスリムな筐体に、最新のFET RFアンプを搭載しました。混雑した通勤電車の中でも、アンテナを振り回すことなく、クリアな音質で情報を収集する。それは、都会を生き抜くビジネスマンの新しい作法でした。
特筆すべきは、そのネーミングの妙です。「E・AIR」という響きには、後のネットワーク時代を予見していたかのような、洗練された響きがありました。情報を単なる電波としてではなく、空気(AIR)のように身に纏い、スマートに使いこなす。そんな21世紀のデジタルガジェットにも通ずる先鋭的な感覚が、1980年代初頭のソニーには既に宿っていました。
現金正価7,800円。ON/OFFボタンはポケットの上からでも操作できるよう、軽く触れるだけの感触にこだわっています。性能をデザインに、そして名前にまで昇華させるソニーの美学。それが、この小さな黒い筐体には凝縮されています。

