1960年 ナショナル 電気掃除機|「なでるだけ」で掃除が変わる

1960年 ナショナル電気掃除機 MC-17型 広告。畳を掃除する様子。 暮らしの家電

柔らかな色合いの畳の上を、淡いクリーム色の円筒形が滑るように進んでいきます。赤いフレームと長いホースを持つこの機械は、1960年(昭和35年)に松下電器産業から発売された電気掃除機 MC-17型 です。

「サーッと、なでるだけで すっかりキレイ!」と書かれています。

箒で掃き、塵取りで集める。そんな掃除の風景が、機械によって変わり始めた時代でした。

畳の暮らしに入り込んだ電化製品

1960年代初頭、日本の家庭には電化の波が押し寄せていました。洗濯機、冷蔵庫、テレビといった家電が生活の中心に入り込む中で、掃除の方法も変わり始めます。

それまでの箒による掃除は、埃が舞いやすく重労働でした。都市部では団地住宅が増え、住環境が近代化するにつれて、より衛生的な清掃方法が求められるようになります。

この広告で印象的なのは、畳の上で掃除機が使われている点です。洋風住宅が広がり始めたとはいえ、当時の生活の中心はまだ畳でした。伝統的な住まいの上で最新の電化製品が使われる姿は、日本の家庭がちょうど転換期にあったことを示しています。

300ワットの吸引力と静かな運転

MC-17型の特徴は、当時としては強力だった 300ワットの吸引力 にあります。空気の流れで埃を吸い込み、目に見えない細かな塵まで取り除く仕組みでした。

さらに

  • 排気で埃を舞い上げない構造
  • 静かな運転
  • 軽量で扱いやすい設計

といった家庭用機器としての工夫も盛り込まれています。

広告では「20分使っても電気代は1円足らず」と紹介されており、日常的に使える家電であることも強調されていました。また、家具の隙間や細かな場所を掃除するための7種類の応用部品が用意されていた点も、この時代の家電らしい設計です。

1万円という近代生活への投資

MC-17型の現金定価は 10,000円。1960年当時の大卒初任給はおよそ 13,000〜15,000円 でした。掃除機一台が、ほぼ月給に近い価格だったことになります。

それでも「なでるだけで部屋がきれいになる」という体験は、多くの家庭にとって魅力的なものでした。重労働だった掃除を、機械が肩代わりしてくれる。電気掃除機は、家事の負担を軽くする新しい生活道具として少しずつ家庭に広がっていきます。

畳の部屋に最新の電化製品が入り込んでいくこの光景からは、日本の家庭が伝統的な暮らしを残しながら、近代的な生活へ移り変わっていく1960年代の空気が感じられます。