1970年 サントリー スペシャルリザーブ|高級ウイスキーの民主化

1970年のサントリー・スペシャル・リザーブ広告。氷の入ったグラスとボトルの静かな夜の情景。 至福のひととき

暗い背景の中に、丸みを帯びた黒いボトルとグラスが静かに置かれています。
氷を入れたクリスタルグラスには琥珀色のウイスキーが注がれています。

1970年にサントリーが発売した「スペシャルリザーブ」を紹介する広告です。
「サントリー〈とっておき〉が満たす夜のくつろぎ 豊潤のとき」というコピーが添えられています。派手な演出ではなく、ボトルとグラスだけでウイスキーの重厚な雰囲気を伝える構図です。

山崎蒸溜所のモルト原酒

スペシャルリザーブは、サントリー創業70周年を記念して発売されたブレンデッドウイスキーでした。

核となるのは、山崎蒸溜所で熟成されたモルト原酒です。ホワイトオーク樽で長期間熟成された原酒をブレンドし、円熟した香りとまろやかな口当たりを特徴とする味わいに仕上げられていました。

ボトルデザインにも特徴があります。ラベルには名前を書き込める「サインシート」が設けられていました。これは当時バーやスナックで広がっていた「ボトルキープ」の習慣を意識した仕様で、所有する楽しみを演出する工夫でした。

万博の時代と洋酒文化

1970年は大阪万博が開催された年で、日本社会の国際化が象徴的に進んだ時期でもありました。

食文化においても海外志向が強まり、洋酒、特にスコッチウイスキーへの関心が一般層にも広がっていきます。日本のウイスキー市場では、それまで主流だった安価な二級ウイスキーから、品質を重視した特級ウイスキーへの需要が徐々に移っていきました。

広告にある「西洋党(スコッチ・ファン)も感嘆した」という言葉には、国産ウイスキーが海外の銘柄と肩を並べる品質に達したというメーカーの自信が込められています。

2,700円という“とっておき”

760mlで2,700円という価格が示されています。

1970年頃の大卒初任給は約4万円前後でした。そのため日常的な酒としては高価でしたが、贈答品や特別な日の酒としては手の届く価格帯でもありました。ウイスキーはこの頃、家庭での晩酌だけでなく、接待や贈り物、バーでのボトルキープなど、さまざまな場面で楽しまれる酒として広がっていきます。

ウイスキーが特別な日の酒としてだけでなく、夜のくつろぎを演出する存在として生活に入り始めた1970年代初頭の空気がよく伝わってきます。